時間の経過こそ、薬であり、癒しなのかもしれない

2017.8/14

患者さんたちが精神科を受診する。

気分のふさぎ込み、死んでしまいたいという気持ち(希死念慮)、不安や焦燥、落ち着かない、意欲の低下、不眠、幻覚妄想、物忘れ、訴えは様々である。
我々、医療者は、話を聞く側であるが、初診時から、患者さんが全てを正直に話してくれるとは限らない、と知っている。
これは、患者さんを疑っているというわけではなく、話を聞いてくれる相手が、精神科医やカウンセラーだとしても、しょせんは初対面であり、そもそも、人は本当のことを喋り始めるまで時間がかかるものだ。

それゆえに、精神科における治療とは、“時間をかけて付き合っていく”ものであり、“治す”というより、“支えていく”というスタンスがしっくりくるのかもしれない。
時間の経過こそ、薬であり、癒しなのかもしれない。

また、人間の心が崩れていくときは本当にあっという間である。
それを、立て直すときは、その何倍も時間がかかるし、大変だ。
しかし、崩れたものを再構築していく過程にこそ、こころの安定があるような気がする。


監督 池谷 龍一

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