人間への興味が医療の第一歩となる

2019.7/31

先日、山形県の行政とNPO法人の方々が県内の高校生を対象とした、進学や就職に関するガイドブックを作成するにあたり、インタビューを受けました。
それをそのまま、OB会誌に寄稿するというのも、いかがなものかと思いますが、時間がございません。
厚かましさだけで生きているような私です、恥も外聞もなく、投稿させていただきます。なお、内容などに関して発行された冊子に版権は無いようです。
もっとも、自分の言葉で答えたことですし、はじめから他媒体での使いまわしを狙って話している節がございます。
それを告白させていただいた上、この度の「こまくさ」の投稿文とさせていただきます(実際、このインタビューの内容、多少、手を加えて、施設などの会報誌や市報に載せちゃっている)。

申し訳ございません、前口上が長くなりました。
これら、ただの言い訳、顰蹙上等、開き直りの確信犯、と云います。
シェイクスピアは“良心なき正直者”と言っていたとか、言っていなかった、とか。
もっとも、私は、不誠実さにおいて期待を裏切らない誠実さ、もしくは、一途な浮気者(ワケ、ワカンナイ)、まあ、悪く言われるのは慣れていらあね…。

さて…、お目汚しではございますが…。


―この病院に赴任された経緯は?
私は、静岡県浜松市の出身で、大学進学をきっかけに山形県へ参りました。医師となってからも、米沢市立病院や日本海総合病院など、山形県内で勤務していますので、20年間以上、山形県で暮らしていることになります。
医師になって初めて立った医療現場が大学病院の救急部でした。そこでは、救急搬送される患者への対応、様々なケースを体験しました。そのなかには、自死自殺を試みて搬送される方々もおりました。その頃から、医療現場において、身体の治療だけではなく、精神のケアも重要と思い始め、2年間の初期研修を終えた後、精神科医としての道を選びました。
医師になった頃から医師不足の地域で働いてみたいと考えていましたし、その後、縁あって新庄明和病院へ赴任し、最上地域で生活することになりました。

―精神科のニーズは増えていますか?
はい。増えていると思います。高齢社会における認知症の増加およびストレスがあふれるこの社会、つまりは、現代という時代に伴って。そして、また、精神科受診の敷居が低くなってきています。しかし、精神疾患への偏見はまだまだ根強いといえます。精神医療に関する負の歴史、たとえば、1975年にジャックニコルソンが出演した「カッコーの巣の上で」という映画がありますが、この映画で表現されていたような精神疾患への偏見は、映画の上映から40年以上経った今でも完全には払拭されていない、と私は感じています。
重たい精神疾患を持つ患者さん方は、もちろんその病気とたたかっています。また、その病気を患うことで、社会との間で軋轢が生じるときがあります。これが偏見の構図です。ある意味、精神医療の歴史とは、精神疾患がもたらす偏見とのたたかいでした。まだまだ根強く残る精神疾患への偏見、そして一方、ときに精神医療への過剰な期待、我々が行っている精神医療、こころの医療分野は、さまざまな要素が複雑に絡み合いながら、その需要は徐々に高まってきているような印象を受けます。

―ストレスにどう対処していけば良いでしょうか
私が考える心構えのひとつは「ユーモア」です。日々、いろんな大変なことが起きますよね。さまざまなことを、苦笑しながら、やり過ごすことも少なくはありません。苦笑いっていうんですかね。かすかに笑った後に残る苦さを、こころの内で上手く飼い慣らしていくことは、生きていく上での知恵なのかもしれません。サマセット・モームが云っています。「人生をおくる上で最上の心構えは、ユーモアの伴う諦めである」。モームの言葉は、いかにも英国人らしい皮肉めいたものに聞こえますが、ユーモアの本質と大切さを表しています。

―ユーモアは自分を客観視することにつながるような気がします
 そうです。ユーモアは程良い自己観察をもたらし、自分自身と現実世界の連携をもたらすツールでもあります。

―医療を志すのに必要なことは何でしょう
ひとつは言うまでもなく“患者さんを思いやる心”でしょう。二つ目は、患者さんに対して“興味”を持てるかどうかではないかと思います。内科などの身体科と異なり、検査結果の数値などの客観的事実からだけではなく、患者さんの話す内容や話し方、身なりや服装、ちょっとした仕草から、診断・治療に必要なファクターを拾い上げていかなくてはいけません。その時に大切なのが、患者さん自身と患者さんの話すストーリーに対する“興味”だと思います。三つ目は、肉体的にも精神的にもタフなこと、つまりは“体力”。
そのためには、勉強はもちろん大切ですが、音楽や絵画などの芸術、映画や小説で「人間」を描いたものに若い頃から数多く触れること、また、スポーツや課外活動に参加して多様な人間像と触れ合うことが大切だと思います。

―現在、お住いの最上地域のご感想は
食材のレベルが高いですよね。本当に美味しい生活ができるところだと思います。


「もがみ仕事の魅力ガイドⅡ」より
(人間への興味が医療における第一歩となる~精神医療で地域の人々の心の健康を支える~)


監督 池谷 龍一
(令和元年『こまくさ』より転載)

▼▼▼令和元年9月21日(土)開催▼▼▼
【ラグビー部OB・OG同窓会のお知らせ】はコチラ

カテゴリ